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豆知識 Vol.23
「藁の上からの養子」の事案で実親子関係の不存在を争う場合

本コーナーの各記事の内容は、特にことわりがない限り掲載時点の法令に基づいたものとなっておりますのでご注意ください。

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1 はじめに

以前、豆知識Vol.5「血の繋がらない戸籍上のみの子の相続権」でいわゆる「藁の上からの養子」には相続権が認められないというお話をしました。そこでは、「藁の上からの養子」に財産の承継を認めてやる方策はないかという観点から説明しました。

今回は、このような「藁の上からの養子」がいるために不利益を被る第三者(典型的には相続権を侵害される真の相続人)の観点からお話しします。

【相談事例】(相談者X)

最近、父Aが亡くなった。私(X)は父の再婚後の子で、父の戸籍関係を調べたところ相続人は自分のほか、前妻との子Yの二人のようである。自分は、Yの存在を今回初めて知った。
ところが、最近、父の弟(つまり叔父)からこんな話を聞かされた。
「AにはYという子がいるようだが、実は以前、Aから、なかなか子供ができないので、前妻の親戚の子を自分の子として届け出たという話を聞いたことがある」
これを聞いた私は驚き、AとYの間の実親子関係を争いたいと考えている。


2 Xが取るべき方策

まず、Yが本当に「藁の上からの養子」であれば、YにはAの相続権はありません。

それでは、Xは当然にAの唯一の相続人としてAの遺産全てを承継できるのでしょうか。

結論から言えば、本事案ではYに相続人としての外観がある以上、正式な手続を経てYの相続権を否定してやらなければならず、XはYに対して親子関係不存在確認請求訴訟を提起し、親子関係の不存在を確定させた上で戸籍を訂正する必要があります。

親子関係不存在確認請求訴訟においては、AY間に生物学的な親子関係が認められるかどうかが争点になりますので、DNA鑑定を行うのが一般的です。
仮に、DNA鑑定に使えるような検体がない場合は状況証拠から立証していくことになるでしょうが、立証は困難を極めるのが通常です。

もっとも、親子関係の不存在が立証されたとしても、親子関係不存在確認請求が権利濫用にあたるとして排斥される場合があります。なぜなら、虚偽の出生届に基づき実子として育てられた子には何の落ち度もないからです。
判例(最高裁平成18年7月7日判決)は、親子関係不存在確認請求が権利濫用にあたるか否かの判断要素として、以下のような要素を考慮しています。

⑴ 虚偽の親子の間に実の親子と同様の生活の実体があった期間の長さ

⑵ 判決をもって実親子関係の不存在を確定することにより虚偽の出生届がされた子及びその関係者の被る精神的苦痛、経済的不利益

⑶ 改めて養子縁組の届出をすることにより虚偽の出生届をされた子が戸籍上の両親の嫡出子としての身分を取得する可能性の有無

⑷ 親子関係不存在確認請求をするに至った経緯、動機、目的

⑸ 実親子関係が存在しないことが確定されないとした場合に、実子以外に著しい不利益を受ける者がいるか否か

 

2017年10月31日掲載

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