盛岡の弁護士による相続のご相談
佐藤邦彦経営法律事務所
岩手県盛岡市中央通1丁目8番13号 中央ビル2階
本コーナーの各記事の内容は、特にことわりがない限り掲載時点の法令に基づいたものとなっておりますのでご注意ください。
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1 死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、委任者が受任者に自分が死んだ後の事務を生前に依頼する契約をいいます。
依頼対象となる事務としては、以下のようなものが考えられます。
・委任者が亡くなった後の葬儀や火葬、埋葬
・埋葬後の墓の管理
・親族等の関係者への連絡
・医療費や施設利用料の精算
・ペットの処遇
・SNSアカウントの閉鎖
等々です
ここで注意すべき点は、遺言事項(遺言で定めることが法律上要求されている事項)は対象にはできないということです。
通常は、これらの事務は相続人の中の誰かに依頼することが多いのでしょうが、中には親族と疎遠で頼めるような人がいないケースも十分あり得ます。
2 契約の形式
契約には特別な方式は法律上要求されていません。
したがって、極端な話、口頭で行うことも可能ですが、依頼内容を明確化し紛争を防止するためには書面で契約を締結することが望ましいでしょう。
書面作成の形式としては、①実印で押印をした上で印鑑証明書を添付する方式と、②公正証書による方法が考えられます。
3 委任事務の執行費用
委任事務の執行費用は、委任者、その相続人(相続人がいない場合は相続財産法人)が負担します。
しかし、受任者の負担を考えれば、執行費用は委任者から生前に預かるのが良いでしょう。
4 受任者の報酬
受任者の報酬は、特約がなければ発生しません。
特約の存在を明らかにする意味でも、本契約の締結は書面によることが望ましいといえます。
委任者の死亡後は、その地位は相続人に引き継がれます。
したがって、報酬は、委任者の相続人に請求することになります。
報酬の支払時期は、原則として委任事務の履行後ですが、委任が履行の途中で終了した場合は履行の割合に応じて報酬を請求することができます。
5 受任者の義務
死後事務委任契約は、委任契約と同様、受任者に善管注意義務という高度な注意義務が発生します。
ですから、事務の履行の当たっては誠実に処理することが求められます。
受任者は、委任者の死後に相続人から事務の履行について報告を求められたときは、いつでも処理状況を報告し、事務が終了した後は遅滞なくその経過及び結果を報告しなければなりません。
2022年11月9日掲載