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豆知識 Vol.96 失踪宣告と相続放棄申述期間の起算点

本コーナーの各記事の内容は、特にことわりがない限り掲載時点の法令に基づいたものとなっておりますのでご注意ください。

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ある人物(不在者)について失踪宣告の申立てがなされ、宣告が確定した場合、この不在者は、基準時点で死亡したものとみなされます。
普通失踪の場合は、不在者が生死不明になってから7年間が満了したときに、危難失踪の場合は危難が去ったときにそれぞれ死亡したものとみなされるわけです。

それでは、この場合、相続放棄の申述期間(熟慮期間、3ヶ月)の起算点はいつになるでしょうか。

失踪宣告の手続は以下のような流れをたどります。

  1. 法に定める不在者の生死不明期間が経過
  2. 失踪宣告の審判の申立て
  3. 家庭裁判所における審理
  4. 公示催告(3ヶ月)
  5. 失踪宣告
  6. 申立人に対する結果の連絡(審判書謄本の交付)
  7. 14日間経過→審判確定、確定の公告、確定証明書の申請、交付
  8. 確定から10日以内に市区町村役場で失踪の届出→戸籍の変更

 

具体例で考えてみましょう。

例えば、令和3年4月に7年間の失踪期間が満了している事案で、令和4年4月に失踪宣告の審判の申立てをして、令和4年10月に審判が決定され、確定したとします。

この場合、令和3年4月に不在者は死亡したものとみなされます。

ところで、相続放棄の申述期間は、相続人が自己のために相続が開始したことを知ってから3ヶ月以内とされています。
第一順位の相続人の場合、通常は、死亡日が申述期間の起算点とされることが多いでしょうが、失踪宣告は上記の通り、死亡したものとみなされる日付が審判確定のだいぶ前になってしまいます。

死亡したものとみなされる日付を申述期間の起算点とすると、事実上、相続放棄ができないことになってしまいます。

そこで、このような場合は「自己のために相続の開始があったことを知った時」の意義を以下のように考えるべきでしょう。

■ 第一順位の相続人

失踪宣告の申立人である相続人については、裁判所から審判が確定した旨の連絡を受けた時点。

その他の相続人については、失踪宣告の申立人から審判確定の連絡を受けた時点や、戸籍謄本等で死亡記載を確認した時点。

■ 第二順位以降の相続人

通常通り、先順位相続人が相続放棄をしたことを知った時点。

 

似たようなお話は、相続税の申告についても起こります。
相続税の申告期限は、申告義務者が相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内とされています。
この10ヶ月の起算点についても、上述した考え方が当てはまるでしょう。

 

2022年12月2日掲載

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