盛岡の弁護士による相続のご相談
佐藤邦彦経営法律事務所
岩手県盛岡市中央通1丁目8番13号 中央ビル2階
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本年4月1日に改正民法が施行されます。
今回の改正では、相続放棄をした相続人の相続財産管理義務について見直しが行われます。
従来の民法では、相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自分の財産におけるのと同一の注意をもってその財産の管理を継続しなければならないとされていました。
しかしこれによると、相続人全員が相続放棄をした場合などに、相続放棄者がどのような義務を負うのか、必ずしも明らかではありませんでした。
この点について、改正法では以下のように管理義務から保存義務へと規律が改められました(改正民法940条)。
①相続放棄のときに相続財産に属する財産を現に占有しているときは、
②相続人または相続財産の清算人に対してその財産を引き渡すまでの間、
③自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
①について
上記①により、同条の保存義務を負担する相続放棄者は、相続放棄の申述時点で対象となる相続財産を現に占有している者に限定されることになりました。
例えば、親が死亡し子が相続人となるケースで考えてみましょう。
親は、岩手県内の農村地域に自宅を有し、そこで生活していました。
子は、高校卒業までは親と同居して生活していましたが、大学進学を機に都市部に転居しました。
子は、大学卒業後も岩手には戻らず、都市部で就職して、そこで生活の基盤を築いていたとします。
子は、自分の引退後も岩手に帰るつもりはありませんでしたが、そんな中で親が死亡したという事案です。
親には自宅不動産以外にみるべき財産はなかったので、子は相続放棄を考えました。
しかし、ここで問題となるのが相続放棄者の管理継続義務です。
遠隔地にある不動産の管理を将来にわたって継続しなければならないというのは、極めて大きな負担となります。
改正法では、この事案のような相続人は、相続放棄の申述時点で相続財産である親の自宅を現に占有していませんので、責任を負わないことが明確になりました。
③について
これまでの制度では、相続放棄者であっても、その相続放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで財産の管理を継続しなければならないとされていました。
しかし、ここでいう「管理」が何を意味するのか、義務の内容も終期も、明らかではありませんでした。
この点、改正法では、義務の内容を保存義務と表現を改め、その内容は現に占有している財産の保存にとどまり、それを超えた管理義務を負うものではないことが明確化されました。
2023年3月5日掲載