盛岡の弁護士による相続のご相談
佐藤邦彦経営法律事務所

岩手県盛岡市中央通1丁目8番13号 中央ビル2階

営業時間
平日9時00分~19時30分
定休日
土日・祝祭日

電話相談も承ります。お気軽にどうぞ。

019-613-3246

豆知識 Vol.26 遺言者の判断能力を巡る争いについて

本コーナーの各記事の内容は、特にことわりがない限り掲載時点の法令に基づいたものとなっておりますのでご注意ください。

********

遺言は、遺産の最終処分に関する遺言者の意思表示ですから、意思能力(法律上の判断において自己の行為の結果を判断することができる能力(精神状態))を欠く状態でなされた遺言は無効とされます。

遺言は、高齢になってからなされることが多いため、加齢や認知症などで判断能力が相当程度低下した状態で作成されることは珍しくありません。
そのため、遺言当時、遺言者には十分な判断能力がなかったからその遺言は無効だと争われることが多々あります。

それでは、遺言能力としての意思能力はどのように判断されるのでしょうか。

 

◾️ 遺言作成時に判断能力が低下しているだけで直ちに遺言無効となるわけではない

遺言作成に必要な意思能力は、当該遺言に記載された処分内容を理解・判断する能力ですので、遺言書作成時に判断能力が低下しているだけで直ちに遺言が無効になるわけではありません。
裁判例の中には、遺言能力としての意思能力について「遺言事項(遺言の内容)を具体的に決定し、その法律効果を弁識するのに必要な判断能力」があれば足りると判示したものがあります(東京地判16.7.7)。

このことは、遺言で要求される判断能力が個々の事案で異なるということを意味しています。

例えば、遺言の内容が相続税にも配慮されており、長文かつ詳細で財産の配分内容も複雑な場合には、遺言作成時において、より高度な判断能力が要求されることになります。

これに対して、全ての財産を特定の相続人に相続させるというような遺言の場合は、内容が単純ですので、それほど高度な判断能力は要求されないということになります。

先ごろ、第二次世界大戦中に多くのユダヤ人難民を救った「命のビザ」で知られる元外交官・杉原千畝氏の妻の遺言が有効かどうかが争われた訴訟で、最高裁は遺言の無効を主張した杉原氏の四男の主張を退ける決定を下しました。
杉原夫人の遺言の内容は、全財産を長男(故人)の子供二人に相続させるというものでした。

この訴訟の第一審東京地裁は「88歳と高齢だった妻は遺言の作成当時、その内容を理解し、相続人らにどう影響するか判断できなかった」として無効と判断したのに対して、第二審東京高裁は「一読して理解できない可能性はあるが、公証人から説明を受ければ理解できない内容ではない」として有効と判断しました。
最高裁は、第二審の判断を支持したことになります。

最高裁の判断にも、上のような考慮が働いていると言えるでしょう。

 

2017年11月18日掲載

関連記事

お問い合わせ

電話相談も承ります。お問合せはこちらへ。

019-613-3246

営業時間:平日9時00分~19時30分

お問合せ・ご相談はお電話またはメールにて受け付けております。まずは気軽にご連絡ください。