盛岡の弁護士による相続のご相談
佐藤邦彦経営法律事務所
岩手県盛岡市中央通1丁目8番13号 中央ビル2階
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相続人が生前に自分を被保険者、特定の相続人を死亡保険金の受取人として生命保険に入るということはよくある話です。
このような場合、受取人以外の相続人から、受取人が受け取った保険金は被相続人からの贈与であり、特別受益に当たるので遺産に持ち戻すべきだと主張されるケースが散見されます。
このような場合、どのように考えたら良いでしょうか。
1 原則論
受取人は、被相続人が締結した生命保険契約に基づき、この保険金請求権を「自己固有の財産として」取得すると考えられています。従って、受取人は、受け取った保険金を遺産に持ち戻す必要はなく、これとは別に遺産分割を受けることができます。
この点、最高裁も「養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当である」(最決平成16年10月29日)と判示しており、同様の立場に立っているようです。
2 例外
もっとも、上の決定で最高裁は以下のように述べて、例外的に死亡保険金が特別受益に該当する余地を残していることには注意が必要です。
曰く「保険金受取人である相続人と他の共同相続人との間に生じる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認できないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持ち戻しの対象となると解するのが相当である。上記特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである」。
具体的な事案で、自分が受け取る保険金が上の例外的な場合に該当するかどうかは、実際には判断が難しいでしょう。
他の共同相続人から特別受益の主張がなされた場合はもちろん、後日の紛争化を避けたいとお考えの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
2017年10月11日掲載