盛岡の弁護士による相続のご相談
佐藤邦彦経営法律事務所
岩手県盛岡市中央通1丁目8番13号 中央ビル2階
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甲さんが亡くなり、相続人は子のAさんとBさんの2人です。
遺産分割協議の結果、相続財産のうちの不動産はAさんが単独で取得することになりました。
もともとAさんが有していた自己の相続持分に加えてBさんの相続持分を取得することにより本件不動産はAさんの単独名義になるわけです。
ところが後日、Bさんからその不動産の持分を譲り受けたというXさんが現れました。
このような場合、Aさんと甲さんはどのような関係に立つでしょうか。
■ Xさんが遺産分割「前」に持分を譲り受けていた場合
民法は、遺産分割は相続の開始時に遡って効力を生じると規定しています(民法909条本文)。
その一方で、同法は遺産分割によって第三者の権利を害することはできないとも規定しています(同条ただし書き)。
民法909条の規定は、本文で遺産分割に遡及効(過去に遡って効果が生じる効力)があることを定める一方で、その遡及効によって遺産分割前に利害関係を有するに至った第三者が不測の損害を受けないように遡及効を制限するという構造になっています。
したがって、Xさんが遺産分割前に本件不動産の持分を取得していた場合は民法909条ただし書きによって保護されますので、本件不動産はXさんとAさんの共有になってしまいます。
■ Xさんが遺産分割「後」に持分を譲り受けていた場合
これに対して、Xさんが遺産分割後に本件不動産の持分を譲り受けた場合は事情が異なります。
民法909条はこのような場合を想定したものではないからです。
この点について、判例は、遺産分割によって他の共同相続人から不動産の持分を取得した相続人とその持分を譲り受けた第三者は対抗関係に立つと判示しています。
つまり、早く登記を備えた者が勝つというわけです。
したがって、上の事例ではXさんは遺産分割の後にBさんから持分を譲り受けているので、XさんとAさんは対抗関係に立ち、所有権移転登記を先に備えた方が勝つことになります。
2018年5月11日掲載