盛岡の弁護士による相続のご相談
佐藤邦彦経営法律事務所
岩手県盛岡市中央通1丁目8番13号 中央ビル2階
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遺産分割協議を成立させるに当たって、ある相続人に債務を負担させることがあります。
例えば、父親が亡くなった場合に、共同相続人である母親の面倒を見る代わりに他の共同相続人よりも多く遺産を取得するといった場合です。
しかし、遺産を多めに受け取った相続人が約定に反して母親の面倒を見ないで放置するといったケースが少なからずあります。
このような場合、他の共同相続人としては、成立した遺産分割協議の効力を否定して遺産分割をやり直したいところでしょう。
契約では、一方当事者に債務不履行があった場合、相手方は契約を解除して契約による拘束から解放されることができます(債務不履行解除(法定解除))。
それでは、遺産分割協議の場合もこれと同様に債務不履行解除が認められるでしょうか。
■ 債務不履行を理由とする遺産分割協議の解除の可否
この点、最高裁は、以下のように判示して否定説に立った判断をしています。
曰く「相続人の1人が他の相続人に対して上記協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は民法541条によって上記遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。けだし、遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し、その後は上記協議において上記債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人間の債権債務関係が残るだけと解するべきであり、しかも、このように解さなければ民法909条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることになるからである。」(最判平成元年2月9日)
◼️ 遺産分割協議の合意解除と再分割協議はなお可能
しかし、最高裁が否定したのは法定解除であって、共同相続人が全員で遺産分割協議を合意解除したり、再分割協議を行うことはなんら否定されていません。
2018年1月19日掲載