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豆知識 Vol.59 遺産分割協議のあとに、これとは大きく異なる内容の遺言書が出てきた場合について

本コーナーの各記事の内容は、特にことわりがない限り掲載時点の法令に基づいたものとなっておりますのでご注意ください。

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遺産分割協議をした後に協議内容とは大きく異なる内容の遺言書が出てきた場合、遺産分割協議の効力についてはどう考えたらよいでしょうか。
相続人によっては、「故人がそんな風に考えていたのなら、それを尊重したい」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

一般に、遺言書がないと思って相続人が遺産分割協議をした場合、その協議には思い違い(錯誤)があると言えます。

民法上、要素の錯誤(重大な思い違い)がある法律行為は無効と規定されていますので、上のケースがこれに該当すれば遺産分割協議は無効になりそうです。

この点については、以下のように判示して錯誤無効の主張を認めた最高裁判例があります。

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【事案】

被相続人:A
相続人:妻B、子Y、X1、X2、X3
相続財産:本件土地

Aの相続人らは、Aの遺言があることを知らずに本件土地をBが単独で相続する旨の遺産分割協議を行なった。

その後、本件土地を「北150坪をX2の所有地とし、南186坪をY及びX3の折半とする」旨の自筆証書遺言が発見された。


【判決要旨】

相続人が遺産分割協議の意思決定をする場合において、遺言で分割の方法が定められているときは、その趣旨は遺産分割協議及び審判を通じて可能なかぎり尊重されるべきものであり、相続人もその趣旨を尊重しようとするのが通常であるから、相続人の意思決定に与える影響力は格段に大きい。

本件遺言は、本件土地につき分割の方法をかなり明瞭に定めているということができるから、Xらは、本件遺言の存在を知っていれば、特段の事情のないかぎり、本件土地をBが単独で相続する旨の本件遺産分割協議の意思表示をしなかった蓋然性が極めて高い・・・。(最判平成5年12月16日)


【検討】

この判決は、遺言の存在を知らずにした遺産分割協議について、一般的に錯誤無効の主張が認められると判断したものではありません。

遺言の内容が遺産分割の方法の抽象的な指針にすぎない場合や、遺言の内容と遺産分割協議の内容の食い違いが大きくない場合には、遺産分割協議に臨む相続人の判断に遺言が重大な影響を及ぼすとまでは言えないでしょう。
つまり、要素の錯誤には当たらない、ということになります。
そのような場合には、錯誤無効の主張は認められません。

 

2018年5月7日掲載

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