盛岡の弁護士による相続のご相談
佐藤邦彦経営法律事務所
岩手県盛岡市中央通1丁目8番13号 中央ビル2階
撤回とは、一旦なされた行為(法律行為)の効力を、将来に向かって消滅させることをいいます。
それでは、一旦なした相続放棄の申述を撤回することはできるでしょうか。典型的には、多額の相続債務があると聞いて相続放棄をしたが実際にはそのような事情がなかった場合などで問題となります。
1 相続放棄の撤回の可否
家庭裁判所の実務上は、相続放棄の申述書を提出してから受理されるまでは申立ての撤回を認めていますが、相続放棄の申述が受理されると、熟慮期間内であっても撤回することはできません(民法919条1項)。
しかし、いかなる事情があっても相続放棄の申述の効果を否定できないとするのでは、相続人の保護に欠けることにもなりかねません。
そこで、法は、民法総則の規定及び民法親族編の規定に基づいて相続放棄の申述を取り消すことを認めています(民法919条2項)。
2 民法総則や親族編の規定に基づく取消しとは
ここでいう取消しとは、法律行為に瑕疵(欠陥)がある場合に、行為がなされた当初に遡って効力を否定することをいいます。具体的には、以下のような場合があります。
⑴ 未成年者が親権者や未成年後見人の同意を得ずにした相続の承認・放棄
⑵ 未成年被後見人が自らした相続の承認・放棄
⑶ 被保佐人が保佐人の同意を得ず、または、保佐人の同意に代わる許可を得ないでした承認・放棄
⑷ 詐欺または強迫による承認・放棄
⑸ 後見監督人がある場合に、後見人が後見監督人の同意を得ずに被後見人に代わってした承認・放棄
⑹ 未成年被後見人が、後見人の同意は得たが、後見監督人がある場合にその同意を得ないでした承認・放棄
3 取消しの方式
相続放棄の申述の取消しは、家庭裁判所に申述書を提出する方式で行うこととされています。
2017年9月24日掲載